(1)簡易バイオトイレのコンセプト
先進的なバイオトイレは、メーカー品を購入、または専門業者に委託して、大掛かりな基礎工事を経て換気パイプや循環・撹拌用モーターを備えたようなもの。確かに環境負荷は低く、意義深い施設ですが、いざというとき、簡単に設置できるものではありません。電気を必要とする設備の場合、長期の停電時に支障をきたすことも懸念されます。
その真逆にあるのが野山での排泄です。動物たちが森林で排泄することを想像すれば、一ヶ所に集中させず、その都度土に埋めることで自然界の循環に乗って分解されることがわかります。しかし実際に人が無秩序にどこでも排泄をしてしまうと、発展途上国に見られるような疫病問題も起こり得ます。
今回の簡易バイオトイレは、この両者の中間。
・家族など少人数による数日間の利用に耐えうる
・家庭にある材料で作れる
・自然の循環にできるだけ寄り添う
を基本として設計・作成しました。恒久的なトイレではなく、短期間の家庭の排泄に対応しきれる“簡易”バイオトイレです。
(2)基本構造
浸水を少しでも回避するため、庭や畑などのうち、比較的高い場所を選びます。数日間の利用に耐えられる深さの穴(50cm〜1m)を掘り、板で穴の周囲を固定します。
複数の場所が使えそうなときは、深い穴を掘らず、いっぱいになる度に埋め立て、次の場所へ移動していきます。
身近な素材で便座を作り、板に乗せたら周囲に盛り土をして水の浸入を防ぎます。椅子の座面を取り外したものに、トイレの便座を外して乗せてもよいと思います。
予めおがくず、落ち葉、枯れ草などを入れておき、利用のたびに穴の中に追加し、長い棒などでなるべく撹拌します。これは少しでも微生物による分解を促進できるよう、好気環境にするためです。
便座は利用時以外は板やシートと重石などでしっかりフタをしておきます。更に念のため、バイオトイレ自体が雨で水浸しにならないよう、家庭にあるもので覆いをすることも大切です。
今回は災害時に三世代の家族が使えるイメージで、洋式便座を作成しました。(足腰に問題がない利用者であれば和式も可能となり、便座部分自体がほぼ不要となります)
40cm四方の板材を使いましたが、面(板)ではなく太い棒でも、安定する4つの脚さえできれば問題ありません。右は座面(幅5cm)をつけ、下から見た写真です。このままでも十分に座って使えます。
後々で移動するなら、便座の内側の汚れが気になるという声から、ゴミ袋を内側に貼ることにしました。水で流さないのですから確かに便座の汚れが気になるかもしれません(災害時にはそんなことも言っていられないかもしれませんが・・・)。両面テープで貼ってゆき、移動作業の際は新しいゴミ袋と取り換えます。
(3)施工結果
予定地にて草を刈り、シャベルで穴を掘りました。ところが・・・
つくばに降り注いだ連日の大雨、実習前日も雨だったためか、掘った分だけ水が滲み出てきてしまいました。場所を変えて再度掘りましたが、やはり深く掘ると水が出てきます。
バイオトイレでは水が問題となります。水分が多いと嫌気環境となり、腐敗・悪臭の原因になりがちだからです。そのため、場所が固定されるバイオトイレでは大便と小便を分けて処理する施設を備えます。
かといって地中にタンクを埋め込めば、今回冒頭で掲げた「自然の循環に添う」ことが難しくなります。参加者で議論した結果、水を蓄えやすい土壌では、浅く掘って定期的に移動してゆくのが良いという結論に達しました。
可能ならば他の土壌で試すこともしてみたいですが、この日は他の場所を確保できていなかったため、ひとまず仮設置までこのまま仕上げてみることになりました。
穴の周囲に板を敷き、便座を乗せます。ここで浸水防止と固定のために便座や穴の周囲の土を高く盛るのですが、土が水分を多く含んでいたため今回は仮設置。使用時イメージを撮ってみました。
実際の利用シーンでは、レジャー用テントをかける、板とシートで周囲を覆うなど、外部からの視線や雨水に配慮して個室化することも必要になってきます。
特に利用頻度が高い(人数が多い、日数が長い等で穴が深い)場合は、撹拌用の長い棒を挿しておき、使用前後におがくず等と排泄物をよくかき混ぜます。
(4)その他、家庭で災害時に作れるバイオトイレ
おがくず・落ち葉を入れたバケツに用を足し、利用ごとにおがくずを足します。いっぱいになったら囲いなどで明示化した所定の場所に捨て、落ち葉や土と混ぜます。
庭があればバケツを2/3ほど地中に埋めるようにし、庭がなければバケツの周囲にブロックや電話帳など厚みのあるもので足場を作ります。和式で用が足せる人であれば問題なく使用できます。
また災害時、「食料には困らないけど、何日も電気と水道が止まっている」程度の状態であれば、排泄量を増やさない、つまり食べすぎないことも重要です。アウトプット環境(トイレ)が通常通りでないとき、通常通りのインプット(食事)では問題が増えてしまうからです。
天候と地中の状況により、今回の実習では本格的に設置・稼働できる段階まで至りませんでしたが、会場となったつくし農園では、機会を見てバイオトイレを実装する予定。また経過をご報告いたします。
ラベル:バイオトイレ
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